ツカサ工業株式会社

独創的な粉体機器技術で食の安全衛生管理、
汚れない・汚さない・汚れても掃除が簡単。

6月の梅雨降りしきるある朝、JR武豊線乙川駅東方、約1kmのツカサ工業株式会社を訪問し、本社6階の役員応接室で加藤文雄社長にお話をうかがいました。同社は、粉砕、分級、乾燥、混合、輸送、貯留といった、粉体を扱う機器とプラントの設計・施工の専門企業で、近年は特に「食の安全」をポイントにした粉体技術に重点を置く一方、粉体を扱う医薬品やIT産業等への展開を目指しています。

創業事始

終戦直後に先代社長が半田の街中にあった借家の土間で、鍛冶屋を開業したのが始まりでして、1960年代半ばからは「物を作って売る」ということで、溶接用器具の製造販売も始めました。特に溶接ケーブル巻取り機は結構売れまして、当社の「デンドラ」はケーブル巻取り機の代名詞に近いほどの占有率がありました。

粉体の取り組みは、1970年代半ばに製粉会社の補修を引き受けたことから、粉体機械を作ってみないかということになり、作成した機器が好評で、口コミで顧客が広まっていったという状況です。

当社では食品用機器を対象にするようになって、扱う材料はステンレス鋼が多くなり、現在作成する機械の98%ほどがステンレス鋼製です。近年、食品用機器では鏡面仕上げの磨きステンレスが多いのですが、菌がつきにくいということはなく、かえって磨くと粉がつきやすくなってしまうこともあります。本来、ほとんどは磨く必要はないのですが、顧客の清潔感?という「美観」要望もかなりの割合であります。

現場は宝の山、されど...

製造業では現場のウェートが高いのですが、現場での知識・経験がなければ優れた設計はできませんし、現場の知識・経験がなければ相手に感動を与える営業活動はできません。その意味で現場は宝の山なのですが、いくら頭の良い優秀な設計要員や営業要員でも、現場にいる時は評価されませんから、面白くないはずです。また会社としても、その人の設計能力や営業能力を期待するのは、それぞれの部署に移った後のことです。ですから経営者としての手腕では、こうした優秀な人を「いかに悟らせるか」が重要なポイントです。

知財戦略、近年の変貌

当社の所有特許数は300くらいでしょうか。取れる特許の数ははるかに多いのですが、ここ数年は出願を抑えています。と言うのも、今のような高学歴社会となると、ものの本質を知らずとも、模倣することは容易です。特に食品機器のように、水洗いが簡単に作ってあると簡単にバラせますから、ポイントとなる菌が発生しやすい軸受構造をどう処理するかなども、容易に分ってしまいます。ですから特許戦略というのも、ここ数年、大きく変わってきまして、「出さない」とか「他の企業との共願」とか「全く違う形での出願」とか、ケースバイケースで対応するようになって来ました。

また技能検定は会社として積極的に受けていただくようにしていますが、技術の蓄積や伝承については、特段の対応はしていません。決して現在の最良技術が将来の最良技術ではありませんし、需要のあるところには自然に新技術が育ってくると思っています。

グローバル化、国際分業が言われるが...

大量生産品で人件費の安い海外などと競合するのは基本的に無理ですし、中小中堅企業がやっていくには、セットメーカー化しないことが必要と思います。当社では小さな製品も自製しており、忙しくて自製できないものを外で作っていただくようにしています。
また国際的な製造コスト低減競争は今後も増えることが予想されますが、当社では、独創的な開発力を活かし、顧客に新しい価値を提供することでそのニーズに応えたいと思っています。

これからの粉体機器のものづくりは...

当社では、製粉から製パン、製菓とやってきたのですが、粉というものの特性は複雑で、私自身、粉がいまだに分っていません。自分で究めようとせず、何十年も前のヨーロッパの技術を取り入れて、そのままやっているプロが多い分野であり、見究めた人は本当に少ないエリアなのです。そのため当社の開発機器はずっと進化し続けており、ものの本質をつかめれば、これまでより桁違いに小型化した機器も実現可能な業界ですので、今まで以上に企業としての適応力が問われる時代になっていきます。

産学連携と研究開発

適応力の涵養には技術開発力強化が必須と思っていますので、いま当社では産学連携でミクロ中空粒子の研究を行っていますし、社内のテクノタワーには標準的な開発機器を可動状態で持っており、受託試験や少量の受託加工も行える体制でその養成に努めています。

対談終了後、企画課長の森本さんに社内を案内していただきました。金属加工の工場なのに、そのクリーンなことに驚かされ、「汚れない、汚さない、汚れても掃除が簡単」というモットーは、製品だけでなく、その製品を生む製造現場でも反映されていました。

また、本社二階部分には200m2ほどの大部屋があり、手前に営業、奥に設計が入っています。この大部屋の手前側、入り口横の、大部屋と透明材でできた壁・ドアで仕切られた約40m2の小部屋が社長の執務室で、随時、社長が営業や設計にコミットできる体制が敷かれているのが特徴的でした。

会社概要(取材当時)
  • 社名:ツカサ工業株式会社
  • 創業:1946年1月
  • 資本金:5,000万円
  • 代表取締役社長:加藤文雄
  • 従業員:126名
  • 事業内容:各種粉体関連機器・システム・プラントの設計・生産・施工
  • 本社:半田市中午町178番地 TEL(0569)22-3111