イイダ産業株式会社

樹脂の発泡で「軽くて硬い」自動車材料を開発、
練物から始まった防音・制振・衝撃吸収技術。

10月末のさわやかなある朝、名鉄津島線青塚の北方、約2kmのイイダ産業株式会社稲沢本社を訪問し、飯田耕介社長にお話をうかがいました。同社は、発泡性のゴムやプラスチック、エラストマー(ゴムのような特性を有する高分子)などの機能材料の製造・加工を行う専門企業で、近年は特に自動車材料を中心にして、新幹線車両用材料や一般消費者向け生活関連製品の事業展開を行っています。

創業事始

先々代社長は名古屋の瓦町(登記簿上の本社住所)で仕出し屋を経営していた関係で、はんぺん等の練物技術を転用した自動車用のパテ作りが始まりです。当時の自動車はまだ施工精度が低く、隙間が多かったために、それを埋めるパテにかなりの需要がありました。1960年代半ばからはゴムの発泡技術開発に取り組み、1989年の初代トヨタ・セルシオに採用されたのが大きなインパクトとなって、自動車用機能材料開発を推進するようになりました。
現在においても、この「練る」というプロセスは製品の機能発現に大きく影響する極めて重要なプロセスで、原料の性情、配合比、気温・湿度等に応じて、微妙なコントロールが必要です。また当社はここ稲沢に4工場を有しており、それぞれ異なる製品製造を分担しています。

当社で扱う自動車関連製品は多岐にわたっていますが、その主なものとしては、前席横のAピラーの中に1500%を超えるような高発泡率のゴムを充填して風切り音を防止する、ルーフヘッダのチャンネル内に中発泡率のゴムを充填して制振・防音をする、車体中央部のBピラーの中に高強度の樹脂を入れ、制御した発泡率の発泡充填で車体剛性を向上させる、などがあります。これらは通常、車体の焼付塗装の熱を利用して発泡・充填するため、扱いが容易な上に高い密着性が実現できます。もちろん、発泡させるための加熱が得られない場合などでは、別途発泡させた材料を成形し、張り付けるなどして、防音・制振に使うこともあります。

このように最適材料を最適の密度に制御すれば、高張力鋼板が薄くても、またそのグレードが低くても、鋼・発泡樹脂・鋼のサンドイッチ構造にすることで高い剛性が実現され、「軽くて硬い」材料となって自動車の軽量化に大きく貢献することができます。

自動車関連製品で培った技術で...

当社では、現状、自動車関連製品が約90%を占めていますが、発泡性のゴムや樹脂は、新幹線N700系車体の外壁アルミハニカム内にも装填使用され、防音性能を発揮しています。また、こうした防音材料は、工場や住宅の防音にも使用されています。
一方、生活関連製品としては、ジェル状のエラストマーを使用した衝撃吸収クッション、またパソコンのキーボードやマウスの使用時に腕の疲れを軽減する製品で、ジェルでリラックスする「Jelelax」、さらに変わった例としては、墓石と台座の間に挟んだ軟質金属の変形を途中で拘束して、その際にできる隙間にエラストマーを配置することで地震の振動エネルギーを吸収し、墓石の倒壊を防ぐ製品の「はかもり」などがあります。

ポイントは自社アイデアと販路開拓

当社では約40人の開発要員で製品開発を進めていますが、市場動向を見極め、自社アイデアを盛り込んだ提案を顧客に対して行っていくことが大切です。また、こうした複合材料分野の技術開発は急速で、近年は特に炭素繊維やカーボンナノチューブへの注目が高まっています。そのため当社でも、中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律のご支援を受けて、新型炭素繊維を補強基材とする樹脂系複合材料の研究開発を関連企業と共同で進めています。
一方、特に生活関連製品においては、その販路開拓が極めて重要で、相手に感動を与えられる地道な営業努力が必要です。

グローバル化、国際分業が言われるが...

当社では自動車産業に製品を提供するという観点から、米国、タイ、中国に工場を有しており、それぞれ現地での原料の調達をベースにした事業展開を進めています。国内での自動車生産台数がピークを過ぎたとも言われる現在、国際的な自動車生産台数の上でも、また国際競争力の維持の上でも、アジアにおける生産ウェートが相対的に大きくなることも想定しています。なお当社は、在外ブランド名として「Orotex」という商標を使っており、インターネットのURLにも使用していますが、これは「Oronite Chemical」を念頭に置いた造語です。

社内活性化にはまずコミュニケーション

活力のある企業として維持していくために、社長としては社内の各人に対して、出来るだけ頻繁に声かけを行うことが重要と考えています。また当社では、社内の風通しを良くするためにも、毎年、パートタイム従業員を含めた全社員に対して、社長が一人30分程度の個人面談を実施し、広く意見を聞くようにしています。今後は、今まで以上に企業としての適応力が問われる時代になっていきますので、こうした努力が不可欠と考えます。

対談終了後には本社内をご案内いただきました。2階部分の営業や技術が入る200m2ほどの大部屋の横、約20m2程度の飾り気のない小部屋が社長の執務室とのことでした。同社では、世界同時不況からの回復期にある今こそが絶好の組織見直しのチャンスととらえており、「愚直に感性豊かに元気よく」の経営理念の下で、新たな体制を模索してプランを練っていることが窺われました。

会社概要(取材当時)
  • 社名:イイダ産業株式会社
  • 創業:1954年3月
  • 資本金:2億490万円
  • 代表取締役社長:飯田耕介
  • 従業員:195名
  • 事業内容:自動車用防音材、補強材、制振材などの製造・販売
  • 稲沢本社:稲沢市北麻績町沼1-5 TEL(0587)36-5781