アイセロ化学株式会社

独自技術で機能性プラスチックのニッチ製品開発、
クリーン・防錆・水溶性の特殊製品と環境対応。

梅雨の中休みとなった蒸し暑いある夕刻、豊橋駅の東北東、約5kmのアイセロ化学株式会社本社を訪問し、牧野渉社長と谷内秀夫技術開発本部長にお話を伺いました。同社は、プラスチック製品、特に包装用材や容器の製造を得意とする専門企業で、近年は特に機能性フィルムやクリーン容器といった特殊プラスチック製品の開発・製造・販売に取り組んでいます。

創業事始


牧野社長(中央)、谷内本部長(左)、
竹内広報室長(右)

1933年に合資会社ミスズセロファン商会という社名で、豊橋市内にて、セロファンの裁ち屑を購入し、包装紙や紐状に再加工して販売する企業として創業したのが当社の始まりです。その後、1963年に合併によって現社名のセロファンとポリエチレンを主体としたフィルムメーカーになりましたが、1970年に名古屋工場におけるセロファン製造に不可欠な溶媒である二硫化炭素が周囲環境を汚染するとの社会問題となり、当時の技術では完全な除去は不可能との判断から、セロファン事業からの撤退を断行して、名古屋工場を自主閉鎖しました。このことは、売り上げと従業員の半分を失うという大変な決断でしたが、貴重な教訓となって今に生きています。その後、機能性プラスチック製品を中心とした研究開発の取り組みを進め、近年ではこうした特殊製品が大半を占める製造業になっています。

基幹となる技術は...

プラスチック製品を作る技術にはいろいろありますが、当社では主力製品の一つであるボーセロンでは、円筒状に押し出した樹脂にエアーを吹き込んでフィルム化するインフレーション成形法を使っています。この防錆フィルムはポリエチレンに気化性の防錆剤を練り込んだもので、自動車組立企業からの「金属製品を包んで置くだけで使用時には錆のない部品を使いたい」という要望によって、1960年代後半から開発に取り組んだもので、現在では広範囲のニーズに応じた製品が準備されています。一方、水溶性フィルムのソルブロンやソルバックでは、可塑剤などを混入したポリビニルアルコールを水に溶解し、回転するドラム上にスリットを通して流延する溶液流延法が使われます。こうした水溶性フィルムは1960年代前半から開発に取り組み、細菌やウィルスを通さないことから、医療現場などでの汚染物の包装ニーズや、農薬や食器洗剤の包装材など、様々な用途で利用されています。
またクリーン容器は、筒状のプラスチック成形品中に空気を吹き込み、型壁面に密着した状態で冷却固化させて成形するブロー成形法で製造しています。内容物に対する不純物(固体粉や金属イオンの溶出など)の混入を極限まで抑えることで、高純度薬品や医薬・化粧品・香料等の用途で要求される製品を実現しています。

特殊製品が会社を支えるようになるまでには...


主要製品の例、(a)防錆フィルム、(b)水溶性フィルム、(c)クリーン容器

当社では、以前は多くの汎用品を製造しており、また昨年まではリサイクル原料でのゴミ袋製造も実施していました。しかし汎用品は価格競争となる場合が多く、安定した経営には研究開発に基づく特殊製品へのシフトが不可欠との判断から、C(クリーン製品)、B(防錆フィルム)、S(水溶性フィルム)というCBS製品の拡充に取り組み、15年ほど前は30%程度であった割合が、今は57%と、目標の60%まであと一歩という状況まで来ています。
しかし、こうした特殊製品が社会の認識を得て、広く使われるまでになるには、長い年月の地道な営業活動が必要であり、当社のボーセロンを例にとっても、開発を開始したのは40年ほど前ですが、販売が大きく伸びてきたのはここ10年のことです。また、特殊製品では必然的に市場が小さく、それぞれの顧客のニーズに的確に応えていくことが必要です。当社では製品在庫をもたず、原則注文生産を実施していますので、他社と比較すると、原料替、段替、始動等の切替回数が非常に多くなっています。しかし、これが逆に一回当りのロスを削減する原動力となり、多くのノウハウが蓄積できるようになりました。こうした機動性では他社に負けないものと自負しています。

地球環境問題との共存を図るために...

当社では環境配慮製品の開発を積極的に実践しており、その一環として、10年ほど前に天然成分で生分解性フィルムの量産化技術を確立する一方、来年からは穀物を使わず、サトウキビを原料とするアルコールをエチレン重合したポリエチレン製品の上市を計画しています。これらはいずれも、石油由来の製品に比べ、コスト的にはまだ十分と言えませんが、今後に予想される石油資源の枯渇の意味からも、開発を促進すべきものと考えています。

特殊プラスチック製品の海外戦略としては...

当社では、関連会社として独立採算の海外法人の生産拠点を、マレーシア、韓国、中国に有しており、主力製品の防錆フィルム等の生産を実施しています。幸いにして自動車部品の国際分業化が進み、防錆フィルムの国際的なニーズは増加傾向にありますので、国内生産品の品質レベルに合わせるよう、積極的に技術と人事の交流を図り、世界市場の拡大につなげていきたいと考えています。

訪問した同社は、本社1階にはガラス壁を多用したスペースに研究開発機器を集め、また2階には広い展示室を設けて製品内容等の詳しい説明を実施する一方、ホームページの整備に力を入れ、顧客への理解と社会責任の達成を図っているという印象を受けました。

会社概要(取材当時)
  • 社名:アイセロ化学株式会社
  • 創業:1933年4月
  • 資本金:3億5,000万円
  • 代表取締役社長:牧野 渉
  • 従業員:505名
  • 事業内容:機能性プラスチック製品の開発・製造・販売
  • 本社:豊橋市石巻本町字越川45番地 TEL(0532)88-4111