株式会社ニデック

目と身体のためにできることを追求、3つの「アイ」(気概・違い・世界)を

高齢化社会への対応技術につき熱く語る小澤社長
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「アイ」言葉に独自製品を開発。

 晩秋とはいえ暖かい日々が続く11月中旬の午後、蒲郡の西部、JR三河塩津駅に程近い工業団地内にある株式会社ニデック本社を訪問し、小澤素生社長と大槻幹研究開発本部長にお話を伺いました。同社は、目とヘルスケアの製品・サービスの提供で、世界の人々に「見える喜び」を届けたいと願い、眼科医療用機器や眼鏡店用の機器、コーティングなどの技術開発に取り組む企業です。

創業開始

  当社は、映画館用の映写レンズの設計等を行っていた先代(創業者)が、米国留学時に目の構造の素晴らしさと、地方都市にあっても特徴ある製品を提供する企業の存在に触発され、帰国後の昭和46年、同僚らと光学と電子技術を融合して「眼」を追求する企業を、蒲郡市内に設立したのが始まりです。創業当初から眼科手術用の凝固装置(眼球内に光を通し、病変部位などを加熱変性させて網膜病変などを治療する装置)や眼鏡店用の機器開発に取り組み、昭和50年代に発表した他覚式自動屈折度測定装置(オートレフラクトメータ:瞳孔から赤外光を眼に入れ、その反射光から近視・遠視・乱視を計測して必要な眼鏡レンズの度数を知る装置)が好評を得たことを契機に大きく成長し、眼に関する製品を幅広く開発、製造、販売するグローバル企業として現在に至っています。

基幹となる技術は・・・

 創業当時、眼科の検査機器は基本的に海外製品でマニュアル操作の光学機器が多く、検査を行うにも専門知識やノウハウを必要としていました。そうした中で当社は、こうした機器に電子技術を取り入れ、自動化を進めることで高い測定精度と容易な取扱いを実現してきました。当社の代表機器となった前述のオートレフラクトメータも、それを支える技術は、光学技術やレーザ光源技術、光学部品の薄膜コーティング技術などであり、それぞれ社内に専門の部署を設けて継続的に開発に取り組み、現在でも更なる精度と機能性の向上を図っています。なお、当社の売上構成比率は、眼科医療分野が59.4%、眼鏡分野が27.2%、コーティング分野が13.4%という状況(2010年度実績)です。
 

主力商品である「オートレフラクトメータ」
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 こうした技術のアウトプットとして、眼科の検査室や診察室、あるいは眼鏡店の省スペース化に寄与する機能複合化と、検査結果を詳しく解析できる機能を付与する精密化といった、2つの流れで製品化を図っています。前者の例としては、オートレフラクトメータにケラトメータ(角膜の曲率を計測する装置)やトノメータ(空気を吹き付けた際の角膜の形状変化から、非接触で眼圧を測定する装置)を組み合わせた製品が、後者の例としては、光干渉断層計(赤外光が眼底の組織内で散乱されるプロセスを波長分散で干渉させ画像化することで、検眼鏡や眼底カメラでは見えなかった網膜病変の断層像が容易に観察できる装置)のような、今後の眼科医療に不可欠な装置が挙げられます。

高い顧客満足度を得るためには・・・

 製造業として製品に高い品質水準を維持することは勿論、当社では開発、製造、販売、アフターサービスを一貫して行うことで、顧客の声を製品開発や改良に直接フィードバックするよう務めています。近年は特にデザインの有用性を認識して、欧州のデザイナーによるスタイリッシュな外観の製品も増えており、顧客から好評を得ています。また、製品の大半は世界120ヶ国に輸出されており、国や地域に合せて柔軟に製品仕様を変更し、世界の顧客の声を開発に反映するよう努力しています。
 その他、眼科医療や眼鏡店に必要な機器なら、何でも揃うよう幅広く製品ラインアップを充実させていることも当社の特色です。そのため検査機器や診断装置に留まらず、眼科用の手術機器、眼内レンズ(白内障で白濁した水晶体を破砕・摘出した後に装入するレンズ)、電子カルテなども開発しています。また眼鏡店用の機器では、レンズをメガネフレームの形状に合せて自由に切削・研磨加工するパターンレスエッジャーも主力商品の一つです。こうした幅広い機器や器具を開発してきた経験やノウハウの蓄積が、新しい製品を生み出す際に必要な応用力の根源になっています。

コーティング技術の新展開のために・・・

 当社では、創業以来、レンズや光学部品、ディスプレイなどを中心とした産業用の材料や基板に対し、反射防止や傷防止といった各種機能を付与するコーティングを受託する事業を展開してきましたが、5年ほど前から、独自のハードコート剤の開発を目指して、名古屋工業大学や京都工芸繊維大学と連携し、科学技術交流財団の共同研究事業の研究助成を得て、ナノシリカをアクリル樹脂マトリックス中に均一分散させる要素技術開発を開発しました。新たに開発したコーティング材料は、プラスチック素材の表面にガラスに近い硬度や耐候性を持たせることができ、傷が付きにくく、熱や紫外線による変性にも強いという特性を持っており、自社でさらに実用化開発を進めた結果、一昨年、「ハイブリッドハードコート剤」として製品化に成功しています。
 当社では、コーティング技術に留まらず、製品開発には産学連携を含めた各方面との連携も必須と考え、今後も可能な限り実施していく所存です。

人工視覚システムの実現に向けては・・・ 

人工視覚システムの試作機
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 その他の取り組みとしては、日本企業で初の人工視覚研究所を設立し、

平成13年にNEDO事業を受託したことを契機に、人工視覚の研究を継続して実施しています。このシステムは、網膜の外側で眼球を覆う強膜内に埋植した電極に、メガネに取り付けた小型カメラから取り込んだ映像を電気信号に変換して送り、電気パルスで視神経を刺激することによって、網膜が光を感じなくなった人でも視覚を取り戻せるというものです。大阪大学、九州大学、奈良先端科学技術大学院大学などと共同で開発しており、現在では、49個(7x7)の刺激電極をもつシステムを試作し、患者に対し短時間の臨床試験をおこなう段階までに至っています。

来るべき超高齢化社会においては・・・

 眼は人間の臓器の中で唯一、外から内部の状況を観察できるという特長をもっています。現時点では根治することが難しい疾病も数多くありますが、老化による影響も含めて、眼の状態について詳しく検査、分析したデータを提供することができれば、人の健康維持においても有用な情報となると思われます。
 そのため当社では、まず網膜の検査・診断を行う装置の開発に力を入れ、早期に異常を発見できるシステムの整備を目指しています。その次の段階として、眼の全ての疾病に幅広く対処できる技術・製品の開発、さらには高齢化社会において、人々がいつまでも健康で活き活きと暮らせる社会の実現を支えていきたいと考えています。

会社概要(取材当時)
  • 社名:株式会社ニデック
  • 創業:197188
  • 資本金:46,189万円
  • 代表取締役社長:小澤素生
  • 従業員数:1,383
  • 事業内容:眼科、眼鏡店向け機器およびコーティングの開発、製造、販売
  • 本社:蒲郡市捨石町前浜34-14 TEL(0533)67-6611