株式会社東郷製作所

「昨日よりもよい品」で社会に奉仕する、自動車用小物ばね製品のトップメーカー

 梅雨最盛期の小雨模様の午後、名古屋市営地下鉄赤池駅の南東、約5㎞の東郷町の西端にある株式会社東郷製作所の本社を訪問し、相羽繁生社長と早川徳男総務部長にお話を伺いました。同社は、自動車用小物ばねの専門メーカーで、ばねの開発・設計から製造・販売までの総合技術力を活かし、ばねに秘められた「鋭く」、「大胆に」、「細やかな」動きを力に変える研究開発型の企業として、ばねの次なる課題解決に取り組む企業です。

創業事始

 当社は、知多の出鍛冶であった創業者が現在の東郷町春木に定住し、明治14年にトーゴー農具製作所として鍛造農具の製造・販売を開始したのが始まりです。その後、脱穀機の羽根に使用していたピアノ線の加工技術を発展させ、昭和15年から現社名へと改称して自動車用の小物ばね製造に取り組み、トヨタ自動車工業株式会社に納品するようになりました。第二次大戦の後は、わが国の自動車産業の進展とともに成長し、昭和48年にホースクランプを独自に開発して発明と工夫展で愛知県知事賞を受けたことを契機に、自動車用小物ばねの総合メーカーとして展開し、現在に至っています。

基幹となる技術は・・・

 ばねは自動車一台で3千個程度が使用されると言われる基幹部品で、当社の製品の99%は自動車用です。一口にばねと言ってもその形状は多様で、受ける力の状況や大きさ、発現させる運動の状況等によって、コイル状の圧縮ばね、引張ばね、捩りばね、ワイヤーフォーミング、あるいは板状の薄板ばね、更には板材に多数の圧縮ばねを取り付けたサブアセンブリ等、当社では月当りで8千種といった多様なばねを製造しています。その概略構成比としては、板ばねが4(内2.5がホースクランプ)、線ばねが3、樹脂ばねが2、その他が1という状況です。こうしたばね製造の基本技術は金属の曲げ加工技術で、板材や線材が求められるばね性能を発現するため、いかに最適形状に加工するかがポイントとなります。
 当社の主要製品であるホースクランプは、燃料、オイル、冷却水などが流れるゴムホースをパイプに固定する部品ですが、金属板をプレスで打ち抜き、カムで動作する多段加工機で丸くなるよう曲げ加工することで、経時変化でホースが変形しても外れないよう、円周上が均一にばねの力で押えられる様に最適設計されています。 

高い顧客満足度を得るためには・・・

 ばねの果たすべき機能は多様で、自動車部品に限っても、エンジンバルブ用、自動変速機のダンパ用、ブレーキやアクセルのリターン用、ワイパー用、ホイルキャップ用等、要求される特性と使用条件によって、形状や使用素材も広範囲に及びます。そのため、ユーザの要求に的確に応える最適設計能力と、その製造能力が求められる一方、必要に応じて共同開発を実施することができる体制を持つことが求められます。
 当社は本年5月、100%子会社の「株式会社むろらん東郷」を室蘭市に発足させ、新日本製鐵株式会社室蘭製鐵所(素材製造)及び北海道スチールワイヤー株式会社(鋼線製造)との隣接地での連携で、不具合発生時の対応時間の短縮と中間材在庫の省略を図り、ユーザへの新しいサービス提供を開始しております。現在はまだ小規模ですが、今後、特殊ニーズへの更なる対応に努めていく予定です。

より高性能なばねの実現をめざして・・・

 ばねの製造は、通常、購入した板材や線材に形状を付与し、最適な熱処理を加えることで特性を発現させ、更に必要に応じて調質処理を施して出荷しますが、ばねの使用環境や要求特性がより過酷となる中で、ばねの形状や材料技術、熱処理技術等において、新しい研究開発が求められています。
 当社では、ばねを形成する素線の形状において、通常の線ばねの断面が円形であるのに対し、断面が扁平で外周側に尖った卵型断面とすることで、応力集中を回避し、より大きな運動性と変形代を確保する技術や、ばねのピッチを一定ではなく、密に巻いた部分と疎にまいた部分を意識的に作ることで、共振周波数を変えて高い回転速度まで安定に動作させる等の技術開発に取り組む一方、ピアノ線やばね鋼ばかりでなく、耐熱合金元素を多量に含むマルエージング鋼等の加工技術開発や、高い強度や靭性、あるいは高い耐摩耗性を部品形状で実現する熱処理技術の開発を進めています。さらには環境にやさしい高い耐食性を実現する複合塗装技術として、ばね鋼材表面に亜鉛フレークをシリコン系のバインダで表面加工するジオメット処理の実用に取り組んでいます。

蓄積した技術を生かして・・・

 当社では、長年培ってきたプレス加工技術と樹脂射出成形技術を融合して、インサート成形による電子関連部品の製造を進める一方、自動車への要求が高度となり、小型自動車のエンジン室がより狭く、複雑な配管系となる方向の中で、組付け性や低コスト化に応えるため、押込むだけで確実に結合できる自動車用のクイックコネクタの商品化を実施しています。 
 なお、当社の自動車用以外の製品の数は多くありませんが、例えばテーブルガスコンロ用のホースバンド(ホースクランプ)が東邦ガスの純正品に採用されているほか、畳の上に布団を敷いて寝た人が起き上がる際の補助装置「おきらく」を商品化しております。これは残念ながらばねを活用した製品ではなく、電動モータとウォームギアを用いていますが、老齢化社会への対応の取り組みとして実施しております。

インターネット時代の事業展開は・・・

 当社では受注から納品までを一環オンライン体制で管理をしており、「良いものを大量に安価で」という方向には自信を有しておりますが、まだまだ「よいものを少量でも安価に」という面では対応が必要だと考えております。さらに進歩の早い技術を的確に取り入れていくためには、社外との連携も必須と考えており、常に時代の一歩先を見つめていたいと思っております。

会社概要(取材当時)
  • 社名:株式会社東郷製作所
  • 創業:1881年(トーゴー農具製作所)
  • 資本金:3億400万円
  • 代表取締役社長:相羽 繁生
  • 従業員数:834名
  • 事業内容:自動車用小物ばねの製造加工販売
  • 本社:愛知郡東郷町大字春木字蛭池1 TEL(0561)38-1111