山増電機製陶株式会社

引き継ぐ未来へ、ものづくりの継承
陶磁器工業のノウハウで新技術・新分野を拓く

  節分間近の厳冬の朝、瀬戸市役所の南1km、菱野トンネル南出口西側にある山増電機製陶株式 会社本社を訪問し、加藤五津美社長と加藤守男工場長にお話を伺いました。同社は、配電用碍子や化学工業用充填物等のセラミックス製品の製造・販売に取り組む企業で、近年は産業廃棄物を再資源化した環境浄化セラミックスや多孔質セラミックス等の開発にも取り組んでいます。

創業事始

  当社は、大正3年に創業者の先々代社長が、長兄が営む電機製陶所から分離独立し、山増電機製陶所として、現在はアピタ瀬戸が建つ地で碍子と理化学用磁器の生産を開始したのが始まりです。その後、昭和22年に株式会社化し、更にわが国が昭和30~40年代の高度成長期にエチレンプラント等の化学工業分野で大きく飛躍した際に、反応塔用の耐食性磁器やセラミックス製の触媒担体で売上を伸ばし、知名度を高めることができました。工場を現在地に移転したのもこの頃です。一方、瀬戸の陶磁器産業では、戦後、屋内配線用や高低圧の通信用碍子の需要が拡大して多くの企業が参入し、瀬戸の電磁器工業会の会員数も昭和22年には165社もありましたが、昭和40年には85社、現在は34社と激減し、生産量が低下しています。これに対応して、当社での碍子類と化学工業用焼物の売上比率も、平成10年頃までは2:1であったものが、現在では逆に1:2と、理化学用磁器が主力となる状況になっています。  

基幹となる技術は・・・

  当社では、粘土等の原材料を混練、押し出し成形等を施した後、1300℃程度で焼成し、代表組成としてSiO2 が65%以上、Al2O3 が25% 以下、CaO・MgO・K2O・Na2O が10% 以下、Fe2O3・TiO2 が1%以下の、磁器質の碍子類や化学工業用の充填材であるラッシヒリング(径と長さがほぼ等しい円筒状の製品で、必要に応じて筒内に板状や十字状の仕切りを設け、その充填層の表面積を増すと同時に通過する流体を撹拌し、反応を進める作用を果たす)等の理化学磁器を製造しています。
 なお瀬戸は古くから優良な粘土原料が産出することで知られ、一時は資源枯渇も心配されていましたが、近年は陶磁器産品の生産量が落ち着き、当社で使用する粘土材料は全て瀬戸産であって、隣接する豊田市で産出する珪石と共に原材料の大半を地域資源に依存しています。

高い顧客満足度を得るためには・・・

  技術の進展に伴い、陶磁器産業においても顧客の製品形状や組成に対する要望は多岐に亘るようになり、多品種少量生産を行える体制を整えることが求められています。当社においても移転当初は、トンネル窯(トンネル状の炉の中を製品が移動する過程で焼成がなされる)による製造が主力でしたが、現在はバッチ式のLPG焚きで高い熱効率を有するファイバー炉に切り替え、少量生産に対応しております。
 また、セラミックス材を多孔質化すれば、建材では吸湿性・吸音性・断熱性が向上し、また、触媒担体ではその反応性を大きく向上させることが出来ます。そのため当社では、焼結プロセスの工夫で化学工業用の充填材の多孔質化を実施しており、活性炭系で空隙率60%、硅酸マグネシウム系で50%以上、磁器系でも30%を超える空隙率の材料を実現しています。もちろん、単に空隙率を大きくすれば材料強度が極端に弱くなりますので、バランスのとれた材料の実現が重要であるほか、多孔質系材料の場合、溶出成分が十分小さいことも求められます。

製陶技法を生かした新技術開発を実現するために・・・

  当社ではこれまでに、科学技術交流財団の育成試験や企業連携技術開発支援事業を利用させていただき、産業廃棄物を再資源化した材料での中空のセラミックス球の製造及びセラミックス球への光触媒機能の付与の技術開発を、愛知県の瀬戸窯業技術センターと連携して実施しました。この技術開発では、原料に熱分解性の無機物(当初は有機物を使用)を混合し、焼成過程で発生する分解ガスの作用で外側に緻密殻を有し、内部が軽量体の中空球を作成するものであって、これにより水に浮く球体が形成でき、更にその表面にTiO2スラリーを塗布・焼成して、光触媒機能を付与することで、水面に浮かべるだけで、環境浄化が実現できる材料の商品化を目指します。
   一方、地域イノベーション創出研究開発(地域資源活用型)では、農商工連携技術として、養殖真珠代替核の開発を実施しています。これは、養殖真珠に使われる核が、これまで輸入品である大型貝の殻を球形に加工して使用していましたが、この貝が野生生物の国際取引を規制するワシントン条約の対象種となり、今後の使用が困難となることが予想されるため、その対策である中空のセラミックス球を代用核とする研究を、中部大学、産業技術総合研究所、OKKO真珠有限会社と連携して進めています。この研究では、セラミックス球を顔料で各種の色に着色し、真珠の色のバラエティを増やす実験も行っていますが、白、ピンク、黄などの明るい色の成績は悪く、黒や濃いグレー、茶色などの暗い色の方が好成績となるといった、興味ある成果も得られており、ハート形や涙滴型といった非球形の真珠の実現等とも併せて、更に研究を継続して、真珠の多様性を増す技術につなげる予定です。

インターネット時代の事業展開は・・・

  当社では、直接ではありませんが、多孔質セラミックス製品を楽天のネット販売市場に提供しており、特徴ある製品を広くユーザに提供できる体制を実現したいと考えております。

会社概要(取材当時)
  • 社名:山増電機製陶株式会社
  • 創業:1914 年5 月1 日
  • 資本金:3,600 万円
  • 代表取締役社長:加藤五津美
  • 従業員数:15名
  • 事業内容:配電用碍子、化学工業用充填物等セラミックス製品の製造販売
  • 本社:愛知県瀬戸市水無瀬町191番地 TEL(0561)82-5320