株式会社三協

美しい水を求めて

 日常生活に不可欠な水、その処理といえば飲料水や廃水処理という上下水道に係わる処理を想い浮かべますが、身の周りには他にも、浴場、プール、噴水等、水を扱う施設は色々あります。今回は、そのような施設の水処理装置を製造・販売・維持管理されている(株)三協を訪ね、野原秀雄代表取締役と長谷川昇環境部部長にお話を伺いました。側三協は、県営名古屋空港近くの田畑・住宅・工場等が入り混じる街並みに立地しています。会社正門横には、直径1mほどの石球が湧き出す水により浮上回転するラウンドストーン(1989年の世界デザイン博に出展)が飾られ、水との関わりとともに遊び心が感じられました。お話を伺うと、業務の中心である水処理装置だけでなく、社是「美しい水を求めて」のための様々なご尽力も丁寧に説明や資料提供をしていただき、水処理への熱意が伝わってきました。

創業事始

 当社は1960年に銭湯用ろ過機を製造販売する企業として先代(野原氏のお父様)により名古屋市北区に設立されました。先代は実家が岐阜の銭湯で、東京の銭湯ではろ過機が導入されていることを知り起業しましたが、東海地区はろ過機が普及しておらず、最初は苦労したようです。1967年には水泳プール用のろ過装置を開発して製造を始め、1972年に現在地に本社・工場を移転しました。1974年に研究室を設置して水質の分析や浄化手法の研究を開始し、1976年には環境分析センター(1994年から環境部)を関設して計量証明事業も開始しました。
 その後、1990年代には、FRP製の循環ろ過装置、緊急用浄水装置など、現在の製品ラインナップをなす多くの装置を開発、発売してきました。1999年には、私(野原氏)が2代目として社長を継いでいます。2000年代になると、厚生労働省のプールの水質基準の改定に関わるなど、業界全体に関する仕事も増えてきました。後述するDIN(ドイツ工業基準)の水質基準との関わりから、ドイツ製の水質コントローラー、濁度計等の取扱も始め、2010年には、雨水利用ユニットを関発・発売しています。

基幹となる技術・製品は…

 当社は、水泳プール、浴場、水景施設等の循環ろ過装置の製造・販売及び維持管理を主な業務としています。身近な公共施設では、サンピーチ日光川、愛・地球博記念公園、日本ガイシスポーツプラザなどのプールや、白鳥庭園、徳川園の池の水の循環滑化などに当社の循環ろ過装置が使われています。また、
小中学校のプールに関しては、名古屋市内で60%、東海3県で45%に当社装置の導入実績があります。
 これらの循環ろ過装置の他、金属イオン除去など必要な水質に応じて水処理を行う工業用水用の処理装置、水資源の有効活用を図る雨水利用システム、災害時等緊急時に飲料水を提供する浄水装置などを製造販売しています。また、プール等の施設の運用のサポート、維持・管理のための保守業務も行って
います。 
 現在の年商は7~8億円ですが、内訳はプール5、浴場3、その他2の割合となります。現在は、浴場などの施設の新設が少なくなり、オーバーホールの需要が増えています。

高品質の水の提供のために…

  私(野原氏)も基準改定の検討会に関わった、厚生労働省の「遊泳用プールの衛生基準」の主要な基準項目をドイツの衛生基準DIN19643と比較して表1に示します。我が図の溺度の基準値である2度は透明度3m程度に相当し、基準としてはかなり低いため、実際の室内プールなどでは10mの透明度に相当する濁度0.6度以下が望まれます。
 当社では、プールで必要とされる処理水量での性能・コスト等に優れた砂ろ過方式を採用し、性能の向上を追求しています。循環ろ過装置には硫酸ノミンド(硫酸アルミニウム)などの凝集剤、及び塩素剤の添加機能が付属していますが、負荷(遊泳者)変動があっても濁度や残留塩素濃度の変動を最低限にする薬剤添加法や循環水量などについて実験やシミュレーションを行い、装置の設計・運転法に生かすとともに、一部を名古屋大学の先生の指導のもと、学術論文として発表しています。当社の装置は負荷の無い状態ではプール水の濁度0.05度以下(25m以上がくっきり見える透明度)を維持するなど、DIN基準も十分満たす性能となっています。
 これらの研究成果は、浴場用循環ろ過装置など当社の他製品にも生かされています。

表1 遊泳用プールの厚生労働省及びDIN基準での水質基準抜粋
  厚生労働省
遊泳用プールの衛生基準
DIN19643基準
水素イオン
濃度
pH5.8~8.6 pH6.5~7.2[凝集剤使用時]
pH6.5~7.5[凝集剤不使用時]
濁度 2度以下 0.5FTU以下
ろ過水濁度 0.5度以下
[0.1度以下が望ましい]
0.1FTU以下
遊離残留塩素
濃度
0.4㎎/L以上
[1.0㎎/L以下が望ましい]
0.3~0.6㎎/L
酸化還元電位
(ORP)
規定なし 750mV以上(pH:6.5~7.3)
770mV以上(pH:7.3~7.5)

美しい水の普及のために…

 当社は装置メーカーですが、究極的にはお客様に提供するのは装置を介した水質であるという認識から、「美しい水を求めて」を社是とし、対外的な活動も行っています。この分野で先進的であるドイツのDIN基準(表1)について、DIN職員による講演会を2005年に開催しました。また現在も、公益社団法人日本プールアメニテイ協会の会員として、同協会が開催するプール衛生管理者の講師として水泳プール浄化装置の講義を行っています。2013~2014年度には同協会の調査事業(連続測定によるプールの水質実態調査)のお手伝いもしています。
 また、美しい水のためには、装置ユーザーの適切な管理運用が欠かせないという観点から、「みずすましセミナー」と称する水質管理セミナーを、当社において、或いは学校等での出張セミナーとして実施し、好評をいただいています。

将来への展望は…

 社是にある「美しい水を求めて」が当社の永遠のテーマです。「宇宙戦艦ヤマト」に出てくる「コスモクリーナー」を理想に、装置や手法の開発を進め、色々な場面での水の浄化にお役に立ちたいと思っています。

会社概要(取材当時)

社名:株式会社三協
創業:1960年
資本金:4,576万円
従業員数:52名
代表取締役:野原 秀雄
事業内容:各種水処理装置の製造・販売及び維持管理業務ほか
本社:愛知県西春日井郡豊山町大字豊場宇野田112番地 TEL:(0568)28-1771