共同研究促進事業(過去の共同研究事業)

平成11年度 研究成果

「混在している微量有機溶媒の高効率分離用新規高分子膜の開発」

【研究リーダー】

名古屋工業大学 工学部 教授 辻田 義治 氏

【共同研究機関】

名古屋工業大学、アイセロ化学(株)

【研究目的と概念図】

化学構造が高度に制御された高分子(立体規則性高分子)の結晶構造において、分子鎖間隙に形状・サイズの揃ったナノオーダーの分子キャビティーが形成される場合がある。これを活用して、石油精製プラントにおけるベンゼンの分離や、地下水からトリハロメタンなど微量有害物質の分離除去等々を、高効率に行える分離膜、分離材料等の開発を目指す。具体的には、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)が溶媒分子を取り込んで形成するδ結晶コンプレックス(δform)から、sPSの構造特性を変えずにゲスト分子である溶媒分子を取り除いて分子キャビティー含有sPS膜(メゾフェイズ膜)を調製する。本研究では、sPSを基本出発材料とする新規な高効率分離高分子膜の開発による中部地域の新産業創造を念頭に、メゾフェイズ含有sPS膜の調製方法並びに分離特性の評価を行った。

本研究では培養皮膚の生着率および治療効果を高めるため、遺伝子導入法を用い、より高性能な培養皮膚を開発することを目的とする。すなわち、移植する培養皮膚に抗菌作用および周囲組織の増殖作用をもたせ、移植部における皮膚組織の再生を期待するものである。本研究が完成した場合、全身熱傷などの広範囲皮膚欠損に対してより高い治療効果が期待できるばかりか、他の人工臓器開発への波及効果も大きく医療の一端を担うと考えられる。

芳香族溶媒の高効率分類を目指す分類膜、分離、材料の開発

【研究成果の概要】

名古屋工業大学工学部およびアイセロ化学株式会社が共同して、次に示す各項目について検討し、混合有機溶媒の分離・除去にシンジオタクチックポリスチレン(sPS)膜を活用する上での基礎的知見を得た。得られた研究成果の概要は以下のとおり。

(1)sPS有機溶媒系コンプレックス形成能の検討

ゲスト分子である溶媒の種類によりδformの形成量や速度などが各々異なっていた。特にp-キシレンとm-キシレンの差はメチル置換基の配置に起因していた。また、コンプレックス形成機構にも違いが見られた。p-/m-キシレン混合溶液から得たsPS膜中に形成されたδformには、p-キシレンが優先的に取り込まれていた。

(2)sPS有機溶媒系コンプレックスにおけるゲスト分子の交換挙動の検討

δform含有sPS膜を別の溶媒に浸漬して交換挙動を検討した結果、用いたどの溶媒とも交換し得たが、ベンゼンとの交換は他より速かった。一方、ベンゼンを含む混合溶媒に浸漬した場合、ベンゼンの影響による交換速度の増加がみられ、かつ最終的にはベンゼンは少量しか取り込まれなかった。また、sPS膜を用いてパーベーパレーション(浸透気化)実験を行った結果、ベンゼンやトルエンは透過するものの、メタノールはほとんど透過しなかった。

(3)メゾフェイズ含有sPS膜の調製条件の検討

δformの含有量が多い試料膜ほどメゾフェイズがより多く調製できること、並びに抽出溶媒にアセトンとメタノールを用い、二段階に抽出処理する方法が最適であることを明らかにした。この二段階抽出法により得られたメゾフェイズ含有sPS膜の炭酸ガス収着量は、他の方法で得たものと比べて最大値を示した。一方、sPSアモルファスフィルムを出発材料とする環境負荷の少ないメゾフェイズ膜の新規製膜方法についても検討し、その最適調製条件を確立した。得られたメゾフェイズ構造の経時安定性を評価した結果、少なくとも室温で12ヶ月間安定していた。炭酸ガス収着実験の結果、本法によるメゾフェイズ膜が、上記二段階抽出法で得たものに匹敵していた。

(4)メゾフェイズ含有sPS膜の分離性能の評価

有機蒸気の優先的収着特性が認められた。さらには有機蒸気の収着量が、メゾフェイズ調製時に用いるゲスト分子に依存して変化した。これは、メゾフェイズが内包する分子キャビティーを任意に制御できる可能性を示している。また、p-/m-キシレン混合溶液のメタノール希釈系において顕著なp-キシレンの優先的収着が観察された。次に、溶液系での分離性能を評価するために、水中に存在する微量の芳香族化合物(トルエン、o-,m-,p-キシレン、エチルベンゼンなど)の収着実験を行った。その結果、本法によるメゾフェイズsPS膜の収着能がアモルファスsPS膜よりも高く、ある程度まで分子の形状を認識して収着することが分かった。

以上、sPSを活用した新しい物質分離の可能性を示すことができた。

開発されたメゾフェイズの膜の写真

開発されたメゾフェイズの膜の写真

本研究の主な業績
本研究の主な業績
論文(件) 学会発表・講演
9 43
特許出願の紹介
特許出願の紹介
制御されたキャビティ構造を
有する高分子構造物の製造方法
シンジオタクチックポリスチレン(sPS)から、ナノオーダーの
形状・サイズが揃った分子キャビティーを、
sPSの立体構造には変化を与えることなしに、
二段階に抽出処理して効率良く調製する方法。

【成果発表会の開催】

本共同研究の成果を広く内外にPRすることを目的に平成14年10月11日(金)アイリス愛知において成果発表会を開催しました。当日は産業界、学界、行政から85名の出席者を集め、辻田教授による講演及び鞆津主任研究員(出光石油化学(株))、吉水助教授(名工大)、神村マネージャー(アイセロ化学(株))からの成果報告が盛況に行われました。

辻田教授による講演
辻田教授による講演
吉水助教授による成果報告
吉水助教授による成果報告
発表会風景
発表会風景

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