平成15年度 研究成果
「ヒト皮膚ガス(アセトンとアンモニア)手首装着センサーの開発」
平成15年度から平成17年度までの3年間実施してきました当財団の先導的科学技術共同研究「ヒト皮膚ガス(アセトンとアンモニア)手首装着センサーの開発」の研究成果を報告いたします。
30年前には蚊による伝染病の伝播(でんぱ)や病原菌の感染が恐れられ、ヒトの皮膚表面における蚊の誘引物質を発見する強い社会的要請がありました。このための研究がなされてきましたが、ヒトの皮膚表面から、ガス物質のような非常に軽い化学物質が放出されることは、これまで確認されませんでした。
また糖尿病患者は甘酸っぱい臭いがする事柄が観察されていますが、臭気(香り)の元は、呼気や尿によるものとみなされ、ヒトの皮膚ガスについては、あまり考慮されていませんでした。
この背景に着目し、ヒトの皮膚ガスを効率よく採取して分析することにより、健康状態のチェックに応用が可能な測定器の開発に取り組みました。
1.皮膚ガス測定法の確立
(1)皮膚ガス(アセトン、アンモニア、一酸化窒素、一酸化炭素)の採取方法及び測定法を確立しました。
(2)その自動化・省力化に取り組み、自動サンプリング装置(特許出願)(注1)を開発しました。
(注1)自動サンプリング装置:手から放出される皮膚ガスを採取するため、以下を自動的に行う装置
(3)この装置を用いて臨床のデータを測定し、糖尿病においては皮膚ガスのアセトン量が、肝疾患においては皮膚ガスのアンモニア量が、特徴的に変動することを確認しました。
2.今後の展開
(1)患者への適用を目標に、医療機関との共同研究を検討しています。
(2)「あいち健康長寿産業クラスター形成事業」(事務局:財団法人 科学技術交流財団)の中の生活習慣病への取り組みとの連動を図ります。
(3)医療現場からは、来院の際に皮膚ガス測定を簡便に行いたいとの要望が強く、より小型化した測定装置を開発する予定です。将来的には腕時計のような携帯型測定器を目指します。
(皮膚ガス採取光景)
(1)手・指から必要量の皮膚ガスを採取(3分間)
(2)皮膚ガス成分を濃縮
(3)ガスクロマトグラフ(注2)装置による成分分析(20分間)
(注2)ガスクロマトグラフ:ガス(気体)の成分を分析するために用いる分析装置。
本共同研究の成果を広く内外にPRすることを目的に、平成18年9月28日(木)に、成果発表会を開催しました。当日は産業界、学界、行政等から76名の出席者を集め、成果報告が盛況裡に行われました。