Aichi Science and Technology Foundation
事業内容
アトム窒化技術
1. 鋼材のアトム窒化技術
1.1 窒素拡散層形成の原理
1.2 アトム窒化処理例
2. ダイヤモンド工具によるアトム窒化鋼材の精密鏡面切削
2.1 従来技術の課題
2.2 開発技術
2.3 金型鋼のダイヤモンド切削例
1. 鋼材のアトム窒化技術
1.1 窒素拡散層形成の原理
従来のプラズマ窒化では金型等をグロー放電の陰極として用いるため、多くの高速イオンの衝突を受けて金型表面に鉄の窒化物層が形成されます。そこで、電子ビームを用いて窒素分子を効率よく解離して窒素原子を生成し (EBEP:Electron Beam Excited Plasma=電子ビーム励起プラズマ)、これを窒化に用いるアトム窒化法を開発しました。この窒化法では金型表面へのイオン衝突を必要としませんので鉄の窒化物は形成されません。さらに、金型等とプラズマの電位差を要しないため鋭利な刃ものも適切に窒化できるなど、優れた特徴を有しています。
(特許第2860253 原民夫ほか)
・劉莉, 山本厚之, 菱田隆模, 庄山裕章, 原民夫, 山西哲司, 福本信次, 椿野春繁「プラズマ窒化処理したAC4CおよびAC9Bアルミニウム合金の表面微細組織と摩耗特性」軽金属, Vol.56, No.10 (2006) pp.527-532
・市來龍大、原 民 夫「電子ビーム励起プラズマ源(EBEP 源)」J. Plasma Fusion Res. Vol.87, No.10 (2011) pp.682‐688
・古川泰晴, 原民夫, アブラハ ペトロス「窒素プラズマによる工具鋼の光輝窒化」表面技術, Vol.63, No.2 (2012) pp.113‐117
アトム窒化装置模式図
アトム窒化処理装置
1.2 アトム窒化処理例
窒化処理後の断面組織のSEM像 (左:アトム窒化、右:プラズマ窒化)
材質:SKD61
2. ダイヤモンド工具による鋼材の精密鏡面切削
2.1 従来技術の課題
汎用性の高い金型鋼のダイヤモンド工具による精密切削加工は需要が大きい。しかし、右図に示すように単結晶ダイヤモンド工具の炭素原子が鉄へ拡散し、刃先が急速に摩耗する問題点がありました。
摩耗したダイヤモンド工具の刃先のSEM像
2.2 開発技術
高硬度金型材(例えば高速度工具鋼相当, HRC63)の表面をアトム窒化した後にダイヤモンド工具で切削します。化合物を生成しない窒素拡散層の加工によって、ダイヤモンド工具の欠損と拡散摩耗を抑制し、超精密鏡面加工を実現しました。
(特開2018-135596 知の拠点あいちプロジェクト成果、名古屋大学教授 社本英二ほか)
・齊藤 寛史, 鄭弘鎭, 社本英二, 原民夫「アトム窒化を適用した鋼の鏡面切削」2017年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集 pp.873-874, N62
ダイヤモンド工具の拡散摩耗を抑制する開発技術のイメージ図