令和4年度「共同研究推進事業」では、以下の4件を実施します。
新しい信号解析法ARSを用いた工具予兆保全システムの開発
統括研究者
愛知県立大学 情報科学部 准教授 神谷幸宏
共同研究機関
愛知県立大学、株式会社常盤製作所
研究期間
令和4~5年度
研究開発の要約
本研究は,愛知県立大学で開発された,時間・周波数で高い分解能を持つ新しい信号解析法ARSを用いて工具の予兆保全システムの確立を目指す。
現在,製造業の中小企業において工具の定期交換が経済的負担となっている。しかし,工具がまだ劣化していないのに交換するのに加え,定期的に交換していても破損することがある。そこで,工具を寿命まで使い切ることができるシステム,さらには,新しい工具であっても破損の前兆をとらえるシステムの確立が製造業の企業経営に大きく貢献する。これを実現するカギとなる信号解析法ARSは低い周波数領域で高い分解能を有する。これに加え,令和3年度に実施した科学技術交流財団「企業連携技術開発支援事業」において,ARSの高い時間分解能から,従来は検知できなかった前兆を明らかにした。本研究はメタルソーを題材として,上記事業の成果を展開し中小企業の経営改善に役立つ予兆保全システムの開発を目指す。
再生可能電力の熱変換高密度貯蔵装置の開発
統括研究者
サハシ特殊鋼株式会社 代表取締役社長 佐橋健一郎
共同研究機関
サハシ特殊鋼株式会社、名古屋大学
研究期間
令和4~5年度
研究開発の要約
太陽光パネルや風力などの再生可能エネルギーによる発電は,時間的な変動が大きく,その安定的利用には,電気バッテリーや大型揚水発電などを運用しつつ,利用の拡大がはかられているが,今後の脱炭素化を加速するためには,電気バッテリー以外の新たな発想に基づく電力エネルギーを高密度に貯蔵する装置の開発が必要である。
名古屋大学で発明され基本技術が開発された,酸化還元可逆反応を用いる,世界最高の高密度蓄熱法は,リチウムバッテリーと比較して安価かつ蓄エネルギー密度を上回る装置として構築することが可能であり,また,国際特許申請済みで,構造がシンプルであるため,将来国際的にも必須となる大規模ストレージとしても,発展することが期待できる。そこで,本プロジェクトでは,戸建て住宅で需要が高まると予想される100 MJレベルのエネルギー貯蔵装置を開発し上市化を図るとともに,将来の大規模ストレージ化も視野に入れた技術の確立も狙う。
繊維強化樹脂を用いた次世代医療機器の開発
統括研究者
名城大学 理工学部・准教授 仙場淳彦
共同研究機関
名城大学、豊光産業株式会社
研究期間
令和3~4年度
研究開発の要約
外科手術等に用いる医療機器の軽量化と適切な剛性設計は、外科医の長時間の手術負担を軽減する。これらの機器は、これまでステンレス製が主流であった。近年では、アルミ合金製のものも販売されているが、樹脂系材料を用いるものは少ない。
本研究開発では、繊維強化樹脂を主たる材料として用いて軽量化を図るため、同材料を用いる上での設計製造技術課題の克服を目的とし、形状と材料配置の最適化を行う。特に、実用化レベルの成形が可能で、かつ、実際に手術で利用できる従来品と同等の剛性と操作性の確保を図るとともに、高いX線透過性を付与でき、手術中のレントゲン撮影等の人体へのX線被爆量を軽減し、鮮明な画像撮影にも貢献することを目指す。これらの最適化には、有限要素解析と数値最適化理論を用いる。試作モデルの剛性や操作性に関しては、曲げ試験等による実験的検証と外科医の協力の下、感性評価等を実施し、実用化に向けた開発を進める。
新規機能性材料による電池フリーワイヤレスセンサーの開発
統括研究者
名古屋工業大学 大学院工学研究科 電気・機械工学専攻 准教授 岩本悠宏
共同研究機関
名古屋工業大学、株式会社イノアックコーポレーション、BASF INOACポリウレタン株式会社
研究期間
令和3~4年度
研究開発の要約
IoT社会の実現には,1次電池に依存しない様々な環境に適応・特化した電池フリーワイヤレスセンサーの普及が不可欠である。本研究開発では,これまで未開拓の環境であった大変位・高荷重・超低振動環境に適応した電池フリーワイヤレスセンサーを開発する。本技術シーズは,「大変形する永久磁石」である。機械的特性が非常に優れた発泡ウレタンエラストマー(耐荷重性~20kN,圧縮率~70%)に硬質磁性微粒子(例えば,ネオジム)を安定分散させ,着磁することで,永久磁石化した発泡ウレタンの作製が可能となる。
この新規機能性材料は,変形によりその磁気特性が変化する逆磁歪効果を有しており,電磁誘導の原理により,超低振動数(~5Hz)での環境振動発電のほか,力や変位などの測定も可能である。本研究開発では,その発電メカニズムの解明と最適化,試作機の実装・検証を通して,本技術の有用性と新規電池フリーワイヤレスセンサーの実用化を目指すものである。