令和5年度「共同研究推進事業」では、以下の4件を実施します。
次世代自動車加飾・機能大型部品を実現する金型鏡面/微細テクスチャ加工技術の開発(新規採択課題)
統括研究者
名古屋大学工学研究科 准教授 早坂 健宏
共同研究機関
名古屋大学、株式会社テイエスケイ、名古屋工業大学
研究期間
令和5~6年度
研究開発の要約
自動車の電動化や自動運転普及に伴い、新加飾や新機能を有する大型パネル製品等次世代自動車部品のニーズが高まっている。その実現には、高硬度金型鋼に対する高精度な加飾テクスチャ/大面積鏡面加工が必要とされる。レンズ等小型部品用金型に対しては、申請者らが開発した超音波楕円振動切削技術やPLG(パルスレーザ研削)技術によって高精度テクスチャ/鏡面加工が実現し低コスト化も進んでいる。しかし、小さな工具を用いて粗加工、中仕上げ後に仕上げを行う現状技術では、不十分な工具寿命、膨大な加工時間・コスト・消費エネルギ等のために大型部品用金型加工を実現できない。そこで本研究では、申請者らが新たに考案した振動工具-工作物接触検知技術、工具・工作物位置・形状同定技術、安価で大切れ刃長さを持つダイヤモンドコーティング工具の鋭利化技術を統合し、大型高硬度金型鋼の一発仕上げ・磨きレス鏡面/テクスチャ加工を実現する。
環境に制限されない移動を実現する実作業型大型6脚ロボットの開発(新規採択課題)
統括研究者
南山大学 理工学部 教授 稲垣 伸吉
共同研究機関
南山大学、新明工業株式会社、名古屋大学
研究期間
令和5~6年度
研究開発の要約
本研究では、労働力不足が問題となっている農林業や建設業や、災害現場での救助活動に活用できるロボットプラットフォームとして、環境に制限されない移動が可能であり、かつ重量物の搬送や持ち上げなどの作業が可能な大型6脚ロボットSOL0x03を開発する。本共同研究体が研究してきた多脚ロボットの歩行制御である接地点追従法をベースに、環境認識、運動計画、局所適応を統合して組み込み、実環境を想定した屋内外での実証試験によりその不整地踏破と作業の能力を検証する。さらに、大型6脚ロボットの活用範囲を広げるために、歩くだけでなく脚を使った作業も可能な冗長自由度脚を制御技術と共に開発する。また、環境認識や運動計画における高度な情報処理と歩行制御におけるリアルタイム情報処理との間の情報交換を、遅延なく密に連携して実行できるように、最新のプロセッサ技術とロボット用OSを用いた6脚ロボット専用の組み込みシステムも開発する。
新しい信号解析法ARSを用いた工具予兆保全システムの開発(継続課題)
統括研究者
愛知県立大学 情報科学部 准教授 神谷幸宏
共同研究機関
愛知県立大学、株式会社常盤製作所
研究期間
令和4~5年度
研究開発の要約
本研究は,愛知県立大学で開発された,時間・周波数で高い分解能を持つ新しい信号解析法ARSを用いて工具の予兆保全システムの確立を目指す。
現在,製造業の中小企業において工具の定期交換が経済的負担となっている。しかし,工具がまだ劣化していないのに交換するのに加え,定期的に交換していても破損することがある。そこで,工具を寿命まで使い切ることができるシステム,さらには,新しい工具であっても破損の前兆をとらえるシステムの確立が製造業の企業経営に大きく貢献する。これを実現するカギとなる信号解析法ARSは低い周波数領域で高い分解能を有する。これに加え,令和3年度に実施した科学技術交流財団「企業連携技術開発支援事業」において,ARSの高い時間分解能から,従来は検知できなかった前兆を明らかにした。本研究はメタルソーを題材として,上記事業の成果を展開し中小企業の経営改善に役立つ予兆保全システムの開発を目指す。
再生可能電力の熱変換高密度貯蔵装置の開発(継続課題)
統括研究者
サハシ特殊鋼株式会社 代表取締役社長 佐橋健一郎
共同研究機関
サハシ特殊鋼株式会社、名古屋大学
研究期間
令和4~5年度
研究開発の要約
太陽光パネルや風力などの再生可能エネルギーによる発電は,時間的な変動が大きく,その安定的利用には,電気バッテリーや大型揚水発電などを運用しつつ,利用の拡大がはかられているが,今後の脱炭素化を加速するためには,電気バッテリー以外の新たな発想に基づく電力エネルギーを高密度に貯蔵する装置の開発が必要である。
名古屋大学で発明され基本技術が開発された,酸化還元可逆反応を用いる,世界最高の高密度蓄熱法は,リチウムバッテリーと比較して安価かつ蓄エネルギー密度を上回る装置として構築することが可能であり,また,国際特許申請済みで,構造がシンプルであるため,将来国際的にも必須となる大規模ストレージとしても,発展することが期待できる。そこで,本プロジェクトでは,戸建て住宅で需要が高まると予想される100 MJレベルのエネルギー貯蔵装置を開発し上市化を図るとともに,将来の大規模ストレージ化も視野に入れた技術の確立も狙う。