令和6年度「産学協創チャレンジ研究開発事業(大学シーズ型)」では、下記の研究開発課題を実施します。(4件)
近視進行抑制レンズによるアクティブ・ビジョンケアに関する研究
代表研究者
中部大学 経営情報学部 経営総合学科 准教授 山本 雅也
ニーズ提供企業
東海光学ホールディングス株式会社
研究開発の要約
本研究では、近視の進行を抑えるために設計された「近視進行抑制レンズ」の実用性を評価するための詳細なユーザーテストを行う。このテストには、視野周辺部の結像の阻害度を異なるレベルで調整した複数のプロトタイプレンズが使用され、近視の人々にこれらを日常生活で使用してもらう。特に、読書やコンピューター使用などの視覚的タスクを行う際の視線の動きや快適さが評価される。ユーザーからのフィードバックは直接的な感想として収集され、さらにAIを活用して詳細な分析を行うことで、レンズが視覚的作業に与える影響を定量的に理解し、データに基づいて製品の設計を改善する。フィードバックは数週間にわたり定期的に収集され、これにより快適な近視進行抑制レンズの開発が進められる。
膝関節動態に対する定量的評価のためのスマートフォンアプリケーションの開発
代表研究者
中部大学 生命健康科学部 理学療法学科 講師 富永 敬三
ニーズ提供企業
Tacle株式会社
研究開発の要約
リハビリテーションにおいて、患者に対して正確な評価結果を得ることで初めて機能障害・能力障害を把握することができ、最良の理学療法を提供することが可能となる。開発するアプリケーションは、「下肢の振子試験と独立成分分析に基づく痙縮膝関節のモデル化解析」の研究成果に基づいたものであり、中枢性疾患(脳血管疾患・脊椎損傷など)の関節の障害の状態を評価する3つの指標、粘性・剛性・適合度(痙縮の程度)を数値により表示する。また。スマートフォンのカメラ機能により膝関節の振り子運動を解析する機能を新たに開発し、それによりデータを取得することで3つの指標を算出し、関節動態の定量的評価を行うアプリケーションをスマートフォンへインストールする。将来的には理学療法士22万人・作業療法士12万人への普及を目指し、脳血管疾患を代表とする中枢性疾患数510万人へのQOL向上に貢献したい。
リサイクルカーボン材を活用した小型軽量の装着型生活支援ロボットの開発
代表研究者
愛知工業大学 工学部 機械学科 教授 香川 高弘
ニーズ提供企業
小嶋工業株式会社
研究開発の要約
両脚が不自由な下肢麻痺者の歩行を支援する装着型ロボットがリハビリ訓練に導入されている。しかし、杖が必要であることや重量・大きさの面で課題があり日常生活では使われていない。代表研究者は生活支援を目標として、杖なしで歩行できる新しい装着型ロボットを開発している。杖に頼らずロボットだけで使用者の体を支持するためには脚機構に高い強度と剛性が要求される一方、生活で使用するためロボットは小型軽量でなければならない。また、実用化するにはコストも低く抑える必要がある。そこで本研究では、軽量・高剛性であり、CFRPと比較して低コストで環境面にも優れたリサイクルカーボン材に着目する。脚機構の中で応力の高い部品とわずかな変形が転倒につながる重要な部品をCAE解析および実機の変形量計測によって特定し、そこにリサイクルカーボン材を用いることにより小型軽量で下肢麻痺者にとって利便性の高い装着型生活支援ロボットを開発する。
三河木綿のナノファイバー加工と高機能化技術の開発
代表研究者
あいち産業科学技術総合センター 産業技術センター 環境材料室長 森川 豊
ニーズ提供企業
艶栄工業株式会社
研究開発の要約
愛知県の特産品である三河木綿は、高機能化(抗菌、難燃加工など)技術や環境適応技術への対応による、ブランド力強化が望まれている。
本事業では、①三河木綿製造時に発生する端材等をナノファイバー(CNF)に加工する技術の開発(ごみゼロ化)、②高機能化剤を綿布帛へ固定化する際に植物素材のCNFを用いる技術の開発(脱石油化学素材)、さらに、③開発した環境適応型の高機能化技術を地域内の連携により実証し、新規技術の構築と産業化への課題を洗い出す。
三河木綿の端材の回収と開発した技術の実証は、三河織物工業協同組合との地域連携により行う。本事業内で開発した三河木綿CNFの特徴、特異性を検証し、他のCNFとの差別化を図るとともに、綿製品のバインダーに用いることで、サーキュラーエコノミー事業に対応する技術開発を目指す。